ゴミ屋敷問題において、その「名義人」が「認知症」を患っているケースは、非常にデリケートで複雑な解決を要します。認知症が進行すると、本人が物の価値判断や整理整頓の能力を失い、ゴミを溜め込んでしまうだけでなく、自分の財産を適切に管理することも困難になります。このような状況において、「成年後見制度」の活用は、ゴミ屋敷問題の解決と本人の尊厳を守るための重要な手段となります。成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどにより、判断能力が不十分な人の財産管理や、身上監護(生活・療養看護に関する契約など)を法的に支援する制度です。成年後見制度には、本人の判断能力に応じて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。「法定後見制度」は、本人の判断能力がすでに不十分な場合に、家庭裁判所が後見人、保佐人、補助人を選任する制度です。ゴミ屋敷の名義人が認知症を患い、自身の財産管理やゴミ屋敷の状況を改善する意思決定が困難であると判断された場合、家族などが家庭裁判所に申し立てを行うことで、成年後見人等が選任されます。選任された成年後見人は、本人の財産を管理し、法的な代理権を持って不動産の処分や清掃業者との契約などを行うことができます。これにより、本人の財産を守りつつ、ゴミ屋敷問題の解決に向けて具体的な行動を起こすことが可能になります。「任意後見制度」は、本人がまだ判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、誰にどのような支援をしてもらいたいか、あらかじめ「任意後見契約」を結んでおく制度です。ゴミ屋敷化のリスクがある高齢者が、元気なうちに任意後見契約を結んでおくことで、将来認知症になっても、あらかじめ指定した任意後見人が、本人の意思を尊重しながら不動産の管理や生活支援を行うことができます。これは、ゴミ屋敷問題の予防策としても非常に有効です。成年後見制度を活用する際の注意点としては、まず「本人の意思尊重」が挙げられます。成年後見制度は本人の保護を目的とするため、本人の意思を最大限に尊重した上で、制度の利用や財産の処分などを進める必要があります。また、手続きには時間と費用がかかること、選任された後見人には家庭裁判所への報告義務があることなども理解しておくべきでしょう。
ゴミ屋敷の名義人が認知症に!成年後見制度の活用