年収1000万円を超える高給取り、社会的地位も高く、傍目には順風満帆な人生を送っているはずのエリート層。しかし、その華やかな仮面の裏で、彼らの住まいがゴミ屋敷と化しているケースは決して珍しくありません。一見矛盾しているように思えるこの現象には、彼ら特有の深刻な心理的背景が潜んでいます。その一つが、過度なストレスと完璧主義の罠です。高い給料を得るためには、相応のプレッシャーや長時間労働が伴います。常に完璧な成果を求められる環境で心身をすり減らし、家に帰った時には、もはや部屋を片付ける気力も体力も残っていないのです。散らかった部屋は、唯一、完璧でなくても許される「聖域」であり、鎧を脱げる場所。しかし、その乱雑さが、逆に自己肯定感をさらに低下させ、無気力に拍車をかけるという悪循環に陥ります。また、社会的な孤立も大きな要因です。高い地位にあるがゆえに、弱音を吐ける相手がおらず、孤独感を深めている人も少なくありません。寂しさを紛らわせるためにネットショッピングに依存し、届いた段ボールを開けることもなく積み上げていく。モノに囲まれることで、心の隙間を埋めようとするのです。さらに、ADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害の特性が関係している場合もあります。優れた集中力や独創性で仕事では高いパフォーマンスを発揮する一方、計画的に物事を進めたり、整理整頓したりすることが極端に苦手という特性を持つ人は、ゴミ屋敷化しやすい傾向があります。高い給料は、必ずしも心の豊かさや生活の質を保証するものではありません。むしろ、その代償として払っている精神的なコストが、ゴミ屋敷という形で可視化されているのかもしれないのです。