「困っているだろうから、私が直接言ってあげないと」。隣のゴミ屋敷を前に、そんな正義感や善意から、直接住人に注意しようと考える人がいます。しかし、その行動は、時としてあなたの善意を裏切り、取り返しのつかない深刻なトラブルを招く危険性をはらんでいます。なぜ、直接の苦情は避けるべきなのでしょうか。その理由は、ゴミ屋敷の住人が抱える複雑な心理状態にあります。彼らにとって、ゴミで溢れた家は、たとえ不衛生であっても、自分のテリトリーであり、心の拠り所となっている場合があります。そこに他人が土足で踏み込み、「片付けろ」と指摘することは、彼らのプライドを深く傷つけ、過剰な防衛反応、つまり「攻撃」を引き出すきっかけになり得るのです。「お前に関係ないだろう！」と逆ギレされ、罵声を浴びせられる。それまで良好だった近所付き合いが、顔を合わせるのも気まずい険悪な関係になる。さらに深刻なケースでは、注意した相手から、嫌がらせやつきまといといった、ストーカーのような行為を受ける可能性さえあります。また、ゴミ屋敷を生み出す背景には、うつ病やためこみ症、認知症といった、本人ではコントロールが困難な精神的・医学的な問題が隠れていることが少なくありません。そのような相手に対して、正論で「片付けるべきだ」と説いても、全く理解されず、むしろ症状を悪化させてしまう恐れもあります。あなたの身の安全を守り、かつ問題を確実に解決へと導くためには、必ず「第三者」を介することが鉄則です。賃貸なら管理会社や大家さん、持ち家なら行政の担当窓口。こうした公的な立場にある機関に相談し、対応を委ねること。それが、感情的なしこりを残さず、法的な手続きに則って問題を解決するための、唯一の正しい道筋なのです。あなたの善意は、直接本人に向けるのではなく、適切な相談窓口に繋げるという形で発揮するようにしてください。